JSCI・日本スウェーデン福祉研究所は、元駐日スウェーデン大使が発起人となって設立された行政主導の法人、SCI・スウェーデン福祉研究所の主導で、2005年に設立された社会貢献型企業で、教育とライセンスビジネス、コンサルテーションを主な事業にしています。SCIは、当初、スウェーデンの国立障害研究所に本部を置き、2001年、駐日スウェーデン大使館に日本代表部を開設して、全国の医療介護分野のリサーチをしながら事業のパトナー探しをしました。
目的は、スウェーデンの高齢社会化速度の3倍以上の速さと13倍の人口で高齢社会に突入する日本へ、「認知症緩和ケア」という普遍的な社会福祉理念をベースとした教育を医療と介護、家族などの現場と社会へ提供することでした。
結果として、JSCI・日本スウェーデン福祉研究所が設立されました。
スウェーデン王国のシルヴィア王妃陛下は、認知症となった母君に、実家からスウェーデンの宮殿へお移り頂き、自ら、在宅ケアをなされた時に認知症ケアの難しさとケアワーカーへの教育の必要性をお感じになり、1996年「認知症緩和ケア教育」機関、「財団法人シルヴィアホーム」を設立するとともに認知症デイサービスを併設しました。知識教育と実務教育を平行して行える環境で、ケアワーカー、看護師、医師など、多くの研修者を輩出していて看護師はソフィア大学、医師はノーベル賞の生理医学部門賞の選定委員会がある、カロリンスカ研究所医科大学が教育を担っています。
日本スウェーデン福祉研究所に、認知症緩和ケア教育プログラムとともに提供された、もうひとつのケアプログラムが、「タクティール®ケア」です。認知症緩和ケアの補完的手法で、スウェーデンオリジナルのタッチケアです。2005年、私が、訪問したストックホルム郊外の認知症高齢者施設・グループホームで、重度の認知症高齢者で長身の男性が横になって寝入っていましたが、突然、興奮したように大きな手で自分の身体、頭や顔などをたたき、自傷行為をはじめました。すぐに、シルヴィアホームで研修を受けた、シルヴィアシスターが近づいて、「タクティール®ケアをしましょうね」と声をかけ、触れられる範囲で手のタクティール®ケアを始めました。
理論上は、触れ始めて10分ほどすると「オキシトシン」という脳内分泌ホルモンが分泌され、不安感や痛みが緩和されるということでしたが、この時は、数分で、以前のように、目を閉じて、寝てしまったかのように落ち着き、安静な状態に戻っていました。この著しい変化の状況を見て、日本への導入を強く意識しました。
認知症緩和ケアとタクティール®ケアは、日本ではなじみの無い用語であり、内容的にもほとんど知られていませんでしたが、10年余り経った現在では全国に広がり、2014年度で受講者は累計1万人、体験者は5万人を越えています。多くの学会で実証研究や事例の発表、講演が行われ、学術論文や参考図書、医療系のテキストにも紹介されています。用途も、認知症、がん、知的、精神的、身体的な障害、難治性疾患など多くの現場で活用されるようになりました。
スウェーデンでは、就学前から小学校低学年にわたって児童同士がタクティール®ケアを行うことで、いじめや暴力行為が減っていることをスウェーデンの国営放送が紹介しています。
今後、更に新規業態開発を進めることで、社会の様々な病の緩和とコミュニケーションの向上、そして、QOLの維持向上に役立つことを目指しています。
一般社団法人 日本スウェーデン福祉研究所
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